弟を探すため地頭の良さを活かし探偵業を始めるも、難航。頼る相手もおらず、今更普通の社会に馴染めるわけもなく、次第に孤独感に苛まれ追い込まれていく。
そんな中、事件に巻き込まれる。
探偵事務所の玄関で催涙スプレーをかけられ、気がついた時には見知らぬ部屋にいた。
能天気で声も体格も大きな陽気な男とオドオドした小柄な少女。
ここから出る術を探す自分についていくと言うものだから、足を引っ張らないのなら好きにしろと伝え、行動を共にすることに。
調べたところここは船の中であるらしい。そして、そこで信じられない光景を何度も目の当たりにする。
…詳しい詳細は想像にお任せしよう。だが、叶輪はこの一件を通して、弟という存在以外にも、失いたくないものをつくってしまう。
初めての友人。散々突き放したのに自分と友人でいることを諦めずにいてくれた。そんな友人がかけてくれた言葉。友人の勇姿。その背中…たとえ相手が己より日常を選ぶとしても、自分は、自分だけは、全部忘れたくなかった。
そして、今世界を脅かしているもの。自分に大切なことを教えてくれたヒーロー(友人)と、この世界のどこかで生きているはずの弟、そのふたりを脅かす事象。自分はそれを知っておきながら無視できる人間ではなかった。
世界のためなんて大それた理由ではないが、無関係の人を殺めてきた手で今更…と思うが、彼は決意する。彼の大切な存在のために、いままでの罪を精算するため、たとえ友人にも弟にも、もう二度と会えないとしても、どれだけ救おうがその先に地獄しか待っていなくても、この身を闘いに投じると。